クソログ

愛は、誰を救えるのだろうか?孤独という、あの深淵から……

既視感

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昨日の夜、AからLINEの返信があった。どうやら事故や事件に遭遇し、携帯電話を使えない状況に見舞われているわけではなかったようだ。

返信内容はというと、今週は社員旅行があるからデートには行けないということ。そして、9月は予定が埋まっているから、10月以降じゃないと難しい、ということだった。

Aの休日はたしか土日祝であったと記憶しているが、このまだ月初の時期において月末までの休日の予定が全て埋まっているなどということがありうるのだろうか。少なくとも俺の退屈な人生には無い。Aは休日返上で働くようなキャリアウーマンなわけでもない。仮に本当に埋まっていたとしたら、どんだけリア充なんだよ・・なんて思ってしまう。Aとデートしてみてわかったことだけれど、Aはどちらかといえば受け身で自分から働きかけるようなタイプではない。だから、予定が全て埋まっているというのはにわかに信じ難いというのが俺の正直な印象である。


そして、この「10月以降」というのもミソである。通常、9月が駄目なら10月なら・・と期待するが、10月の予定が空いているとは言っていない。「10月以降」というのは11月も含まれているし、半年先も含まれているし、極論、俺がくたばる日まで先というのも「10月以降」に含まれている。つまり、具体的な日付を提示してこない時点でお察しというわけである。

どこかで見たことある。この感じ。そうやってかわして先延ばしにして自然消滅させる手法。やり方。手口。それがもっとも傷つかなくて楽で大人なやり方。
それほどAに対する疑心の根は深い。

俺はもう、当てのないものを待ち続けることはしない。言葉も信じない。行動だけを俺は信じる。俺はボールは投げたんだ。Aがそのボールを受け取って投げ返さないのであれば、それをわざわざ俺が拾いにいって、もう一度Aに投げるようなことはしない。そんなことをしたって無駄だってことはよく知っているから。
女の甘言に勝手に舞い上がって、勝手に傷ついて自己陶酔したところで、時間の無駄でしかない。その悪癖のせいで、俺はずいぶん無駄な時間を過ごしてしまった。そんなことしている暇があったら、いくらでも動けたのに。全ては俺の中にしか存在しない幻想だったんだ。

もし、まだ俺に興味があるならAから何らかの連絡があるだろう。俺からAにLINEを送ることは2度とない。

あなたは病室を抜け出し、噴水のそばに駆けつける。
廊下やロビーは、大勢の人々でごった返している。
だが不思議なことに、誰一人としてあなたには関心を払わない。

スリッパを履いたまま玄関を飛び出すと、車寄せの向こうに噴水がある。
羽根を広げた天使が、鵞鳥の首を抱いている図柄の彫刻。
陽光は燦々と降り注ぎ、吹き上げられる水を黄金色に染めている。

彼女は、そのすぐ横に立っていた。
こちらに顔を向ける。風に髪が揺れた。
あなたに気がついたらしく、にっこりと微笑む。

あなたは、たしかに、その姿を見た。見たと思った。
しかし彼女は、あなたの目の前で消失してしまう。

太陽が西の山脈の向こうに沈み、夕映えは、噴水の水を深紅色に輝かせる。
あなたは、いつまでも、噴水の脇に佇んでいる。
やがて、記憶は風化するだろう。

言葉にならない思いが、あなたの胸を締めつける。