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クソログ

愛は、誰を救えるのだろうか?孤独という、あの深淵から……

君の心へ続く長い一本糞はいつも僕を勇気づけた

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特別お題「青春の一冊」 with P+D MAGAZINE
http://blog.hatena.ne.jp/-/campaign/pdmagazine




夕方4時。また寝過ごしてしまったようで黄色い空の中に置いてけぼりにされていた。部屋の片隅にある本棚に目をやると、当たり前のように諦めてしまった若かりし日の夢が申し訳なさそうにはにかんでいた。

中でもひと際色の褪せた一冊の本が佇んでいる。

夜のピクニック

夜のピクニック



中学生の頃に、同じクラスの子から借りて、転校を期に返し忘れた本で、途中で読むのをやめてしまった本だった。
どんな物語もたどり着くのは、最後の言葉。ページを進めたくないと思っても物語がずっと続いて欲しいと思っても、必ず終わりが訪れる。僕はこの物語を終わらせたくなかったのかもしれない。
どんな本だったかなとおもむろに手に取って頁をぱらぱらと捲ってみると、便箋が最後の頁に挟まっていた。開封された跡はないようだ。開けてみると中には手紙が入っていた。


クソログ君へ。

お元気ですか。
ええと、何を書けばいいんだろう。そうだ、まずお礼から。今までちゃんと伝えられなかった気持ちを書きます。
私が中学1年生でここに転校してきたとき、クソログ君がいてくれて本当に良かったと思っています。友達になれて嬉しかったです。
クソログ君がいなければ、私にとって学校はもっとずっと辛い場所になっていたと思います。今はここの学校にもなんとか慣れましたが、それでも、クソログ君がいてくれたらどんなに良かっただろうと思うことが、一日に何度もあるんです。
もうすぐクソログ君がもっとずっと遠くに引っ越してしまうことが私はとても悲しいです。私はこれからは、一人でもちゃんとやっていけるようにしなくてはいけません。そんなことが本当にできるのか、私にはちょっと自信がないんだけど。でも、そうしなければならないんだと思います。私も、クソログ君も。そうだよね?

それから、これだけは言っておかなければなりません。本当は直接言葉で伝えたいと思っていることですが、言えなかったときのために、手紙に書いています。
私はクソログ君のことが好きです。
いつ好きになったのかはもう覚えていません。とても自然に、いつの間にか好きになっていました。初めて会ったときから、クソログ君は優しい男の子でした。私のことを、クソログ君はいつも守ってくれました。
クソログ君、あなたはどこに行ったってきっと大丈夫。クソログ君は絶対に優しくて立派な大人になると思います。

クソログ君がこの先どんなに遠くに行ってしまっても、私はずっと絶対に好きです。それを覚えていてください。

どうかどうか元気で。さようなら。


目を通すと、手紙を便箋に入れて再び本に挟んで棚に納めた。「立派な大人」という言葉が頭の中で反芻されている。今僕は本当に生きているのだろうか。

彼女は今どこで何をしているのだろう。
すぐにでも会いに行きたいと思ったけど、傷ついてしまうことがこわくて膝を抱えていた。もう二度と戻れない。
目を閉じてみると深い孤独を感じた。もし会えたとしてもどんな言葉をかければいいのだろう。言葉が指からすり抜けていく。僕はもう歩くのをやめてしまったから。