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クソログ

愛は、誰を救えるのだろうか?孤独という、あの深淵から……

生きてることが辛いならいっそ小さく死ねばいい

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仕事を理由に自殺する人がいる。
そんなとき決まって出てくる言葉が「死ぬくらいなら辞めればいいのに」というものだろう。


あなたは初めて退職願を出した日のことを覚えているだろうか。
私は覚えている。上司がとても厳しい人ですごく緊張していた。退職の意を申し出る声が緊張で震えていたと思う。上司は一言「残念だ」とだけ応えて難なく受理された。どこか上の空でまだ胸が高鳴っているのを感じたが、後悔はなく何一つ変わらぬ日常が待っていた。
そして、次の職場を退職するときは一度目よりも退職に対する心理的障壁や恐怖がほとんどなくなっていることに気づいた。

ところで「はじめの一歩」というボクシング漫画はご存知だろうか。そのはじめの一歩の主人公、マクノウンチイッポはデンプシーロールという必殺技を使う。デンプシーロールは上半身を振り子のように揺らして反動をつけて繰り出す破壊力のあるパンチである。
だが、このデンプシーロールにも弱点があった。デンプシーロールの反動は一定のリズムを刻むため、カウンターにすこぶる弱かったのである。ある日マクノウンチイッポは日本チャンプの防衛戦としてカウンターの名手サワムラと対戦することになる。
そこでマクノウンチはかつての戦友であるアレクサンダー・ヴォルグ・ザンギエフに協力してもらいサワムラを想定したスパーリングを行った。スパーリングで放ったマクノウンチのデンプシーロールはヴォルグにより無残にも打ち砕かれる。マクノウンチはヴォルグの手抜きの軽く合わせただけのカウンターパンチで失神してしまったのである。

そして防衛戦。マクノウンチはデンプシーロールを繰り出すもののやはりサワムラにカウンターを浴びてしまう。しかも手を抜いたパンチではなく、思い切り振りぬかれるのだ。だが、マクノウンチはスパーリングのときのように失神することなくダウンを回避することができた。
ヴォルグとのスパーリングによってカウンターパンチの衝撃、ダメージの感触をあらかじめ知っていたからである。


仕事を理由に自殺してしまう人はたぶん一度たりとも仕事を辞めたことが無い人だと思う。
だから仕事を辞めたときの痛みや衝撃がわからない。わからないから辞めるのも怖い。だから死ぬことしか考えられなくなる。

確かに仕事を辞めるのにはそれなりに痛みを伴う。収入は途絶えるし、社会的信用も無くしてしまう。
だが、その苦しみが死ぬことそのものよりも大きいという人はほとんどいないだろう。

それでも死を選んでしまうのは、やはり仕事を辞めたときの痛みを知らないからだろう。
だから仕事を辞めることが死ぬことと同じくらいの痛みがあると錯覚してしまうのだ。

実際、仕事を辞めたところで死ぬわけでも世界が崩壊するわけでもない。何一つ変わることなく周りの木々が濃い夏の光を浴びていることに気づくことだろう。

生きてることが辛いならいっそ小さく死ねばいい。

そうすれば死という永遠のダウンからは回避できるはずなのだから。